もう1つの感染症問題「薬剤耐性(AMR)」

2019年、参議院議員になってすぐに、私は抗菌薬不足の問題に取りかかりました。
同時に、薬剤耐性(AMR)の脅威と対策についても真剣に考えることとなりました。

抗菌薬に対する誤解や、抗菌薬開発(創薬)に伴う特殊な事情などがあり、国民が1つになって取り組む必要を感じています。

 

そこで、広く国民の皆様にこの問題を知っていただきたく、以下にご紹介いたします。
(すべて公開されている資料から、テキストは抜粋してそのまま引用し、画像も添付しています。画像はクリックすると拡大されます)

 

●AMRとは何か
微生物に対して薬が効かなくなることを、「薬剤耐性」と呼びます。
「薬剤耐性」は英語でAntimicrobial Resistanceといい、AMRと略されます。
AMRの問題は細菌、ウイルス、寄生虫など幅広い範囲でみられますが、近年、細菌のAMRが注目されています。

 

AMR臨床リファレンスセンター
http://amrcrc.ncgm.go.jp/020/010/index.html

 

●「薬がない」という状況
抗菌薬が効かない薬剤耐性菌は、現在世界各地で拡大が進行しており、さらに広がりが大きくなれば、今回の新型コロナウイルスと同様な「薬がない」という状況が世界中で起こると予想されています。
薬剤耐性菌の問題は、新型コロナウイルスと同じように、あるいはそれ以上に人々を不安にさせ、死亡者が増え、世界経済を低迷させる可能性があるのです。

 


AMR臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20200625_press.pdf

 

●重要ファクト(社会的影響と経済損失)

・毎年、世界中で少なくとも約70万人も薬剤耐性により死亡しています
・2050年にはAMRによる感染症の年間死亡者数が1,000万人に上昇すると予測されています
・既に日本ではAMRに関連する事象により毎年8000人もの命が失われていると推定されています
・AMRが原因となり100兆ドルの国内総生産が失われると推定されています

 


AMR アライアンス・ジャパン(特定非営利活動法人 日本医療政策機構)
https://www.amralliancejapan.org/wp/wp-content/uploads/2020/11/AMRアライアンス・ジャパン2020-JP.11.29.pdf

 

●医療への影響
薬剤耐性菌の影響は医療の様々な場面にあらわれます。
たとえば、手術を行う場合、手術に関連する感染症を防ぐために抗菌薬を使用します。
しかし、世の中が薬剤耐性菌ばかりだったら、抗菌薬が効かず感染症を防ぐことができないため手術を行いにくくなることでしょう。
たとえば心臓病など命にかかわる、大きな病気の手術が行えないとなると、薬剤耐性菌そのものが原因ではなくても大きな影響がでてしまいます。

AMR臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20200625_press.pdf

 

●どのように耐性化するのか
多数派の細菌には、抗菌薬が効きます。
抗菌薬投与により大多数の細菌がやられてしまうと、抗菌薬に対する耐性を得ていた少数派の細菌は、のびのびとどんどん増えることができるようになります。
このように、抗菌薬の投与により抗菌薬の効く菌が減少し、耐性菌が増殖しやすくなる状態を、専門用語で「選択圧がかかる」といいます。
(中略)
また、例えば5日間飲むべき抗菌薬をよくなったから1日でやめてしまった、本当は1日3回飲まなければいけない抗菌薬を1回でやめてしまったなど、抗菌薬が中途半端に効いた状態になると、さらなる問題が起こります。
しっかり使っていればやっつけられていたはずの耐性菌が生き残り(耐性菌の中には全く薬が効かない菌だけでなく、十分な量を使えば倒せるものもいるのです)、薬に弱い菌だけがいなくなるという、「耐性菌に甘く、耐性をもたない菌に厳しい」環境が体にできあがります。

 


AMR臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/general/1-2-1.html

 

●日本人の抗菌薬に関する知識はまだまだ低い(意識調査)
・「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」というのは間違い。正しい知識を持つ人は25.3%
・処方された抗菌薬・抗生物質を飲み切らない人は34.6%。飲み残しを取っておく人も多い。

 


AMR臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20201008_report_press.pdf

 

●進まぬ新薬開発
AMRが重要な課題であると認識されているが、新薬開発は進んでいない(COVID-19とAMRの比較)。

 


日本製薬工業協会
http://www.jpma.or.jp/event_media/release/pdf/20200710_kishakaiken.pdf

 

●開発投資を回収できない
・新規抗菌薬を開発しても適正使用が必要(使用量は限定)
→事業から見ると、開発投資を回収できない
→研究者・専門家が減り、研究開発力が低下
→新しい抗菌薬がますます生まれない
→耐性菌の脅威に晒される

 

・新抗菌薬の承認を受けた企業が2019年に相次いで倒産(米国)
・新薬開発に成功した企業が投資に見合った利益を確保できるよう、Market-Based Reform(新たなプル型インセンティブなど)に必要な政府施策が必須

 

日本製薬工業協会
http://www.jpma.or.jp/event_media/release/pdf/20200710_kishakaiken.pdf

 

●AMR アライアンス・ジャパンによる7つの政策提言
・医療現場の現状を踏まえた抗菌薬の適正使用の推進
・国内の AMR に関する危機の管理及びサーベイランス・システムの構築
・積極的な耐性菌スクリーニング検査及び迅速診断検査等を実施しやすい体制の整備
・国民及び医療従事者へのAMRに関する学修支援
・抗菌薬開発を促進するインセンティブ・モデルの策定
・抗菌薬の安定供給
・国内外の好事例や教訓を共有するための国際連携

※AMR アライアンス・ジャパン(特定非営利活動法人 日本医療政策機構)
https://www.amralliancejapan.org/

 

【参考】
◎本田あきこ過去のブログ
https://www.honda-akiko.jp/news/7399.html

https://www.honda-akiko.jp/blog/news/7072.html

◎厚生労働省
薬剤耐性(AMR)対策について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html

◎AMR臨床リファレンスセンター(一般の方へ)

https://amr.ncgm.go.jp/general/

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